Gチャンネルを見て呟く。「ドリパスが断然人気になるのか。正念場だな。」
「ん?何?正念場?」寝耳に水。僕はつい先ほど阪神大賞典の予想を終えたばかり。もちろん大本命はドリパス。デルタとの1点に大きく張って、ポッパ、トリックと、配当次第でマイソーに手を出そうと決めていた。馬男の言葉が気になって仕方がない。
「あれだけ力のある馬だから快勝するかも知れない。ただね、ちょっと有馬の内容が気になるんだ。この調子じゃあ、ドリパス断然人気だろ?あえて明日買う理由はないんじゃないか?」
「ごちゃついた内の狭いところ割ってきたじゃないか。脚余した感じだったし、負けて強しじゃないかな?」
「うん、確かにそう、内容は悪くない。皆、同じこと考えてる。だから断然人気になるんだろう。」
相変わらず遠まわしにものを言うやつだ。「何が気になった?」
「出遅れと反応だよ。」
「だからこそ、負けて強しじゃないの?」
「サラブレッドは生き物だからね。変調を見逃すと痛い目に合う。ドリパスは去年の春先、後ろから競馬をしていた。差して届かず、皐月も、ダービーも後一歩だった。でも、秋初戦はサムソンを徹底マークして差しきり、菊は早めの競馬、JCは先行してともに2着。完全に変身したんだ。だからディープにあそこまで迫れたんだよ。その馬が有馬で出遅れた。反応もよく映らなかった。確かにあの状況で最後詰め寄っているのだから、底力はさすがだよ。だけど、俺は、内容を評価するよりも、状態、調子落ちの懸念の方が強い。」
説得力があるように聞こえてしまう馬男の論理。僕の気持ちがぐらつき始めた。「有馬のゴール前は相当厳しかったよね。だから価値があると思うんだ。有馬記念をどう分析した?」
「有馬はディープに尽きる。あんな強烈な捲くりは見たことがない。ゴール前、内が厳しくなったように見えただろ?ディープが強すぎたからああなったんだ。直接の加害馬はサムソンだけど、ディープの強烈の動きが誘発したのは間違いない。ああなると最内の馬が最も厳しい。俺の見立てでは最も厳しかったのはデルタとメインだね。ポップも不利は大きかったけど、ペリエが巧く立て直して最内を回避したし、肝心のドリパスは一歩後ろの位置取りで被害は小さかった。メジャーは前で巧く立ち回っていたね。みんな同じように不利を受けたように見えるけど、実はドリパスは厳しくないと思う。だから終いが最も目立った。あの末脚は必然さ。」
馬男の評価はドリパスに手厳しいものだった。
「おーもう時間だ。俺帰るわ。」
『ちょっと待ってよ。俺の頭の中を引っ掻きまわして帰るのかよ~そりゃないよ~。』
「馬男は買わないの?ドリパスからは少なくても買わない。実力的に勝って当然の馬だけど、明日は状態と成長力を確認するレースだと思ってる。あ、そうそう、ちょっとした予感だけど、今年の4歳世代って、何となくネオユニヴァースの世代に似そうな節がある。またな。」
言いたいことを言って馬男は去った。何それ?
『そういえば、馬男が最も期待していたのはソングオブウインドだった。しかし、ソングは既にターフを去っている。偶然だろうか…』
『競馬はミステリー。いったい何処まで来たのだろうか。競馬を探す僕の旅は続く……』
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